2025年12月10日
麻布台ヒルズ西堀歯科の柏木です。今回は歯周病とメンテナンスの重要性についてお話しできたらと思います。
歯ぐきの健康は、むし歯以上に「歯を守るための鍵」だということをご存じでしょうか。
実は、歯を失う原因の第1位は歯周病であり、日本人の成人の約7〜8割が何らかの歯周病にかかっていると言われています。にもかかわらず、歯周病は痛みが出にくく、自覚症状がほとんどないまま進行してしまう“静かなる病気”です。歯周病は、いきなり重度になるわけではありません。最初は健康な歯肉(歯ぐき)からスタートし、歯垢(プラーク)が溜まることで歯肉炎が起こり、その炎症が深い部分に広がると、歯を支える骨が溶け始める歯周炎へと進行します。
① 歯肉炎
歯周病のもっとも初期段階です。
歯ぐきが腫れたり、歯ブラシで出血したりしますが、この段階では骨の破壊はないため、適切なケアで元の健康な状態に戻すことができます。
症状
- 歯ぐきの赤み
- 軽い腫れ
- ブラッシング時の出血
- 口臭
原因は歯垢(プラーク)中の細菌であり、毎日の歯磨きと歯科医院での定期的なクリーニングが重要です。
② 歯周炎
歯肉炎が進行すると、細菌が歯根の深い部分へ侵入し、歯を支える歯槽骨が溶け始めます。一度失われた骨は完全には元に戻らないため、早期発見・早期治療が不可欠です。
症状
- 歯ぐきが下がる
- 歯が長く見える
- 歯が揺れる
- 噛みにくい
- 口臭の悪化
進行すると最終的には抜歯に至ることもあります。
日本では成人の約70〜80%が歯周病にかかっているとも報告され、非常に一般的な疾患です。
なぜ定期的なクリーニング(メインテナンス)が必要なのか?
歯周病を悪化させるバイオフィルム(細菌の集合体)は、治療後でも時間とともに再び成熟し病原性が高まります。Lang & Tonettiによると歯周治療後、9〜12週間(2.5〜3か月)で細菌叢が再び病原性の高い状態に戻るとの報告があり、歯周病の方や既往のある方は3ヶ月間隔のメインテナンスがもっとも効果的とされています。またこれはインプラントが入っている方にも共通しており、Monje Aらの報告によるとインプラント周囲炎リスクの高い患者では特に、3ヶ月以上間隔が空くと炎症再発率が上昇することが示されました。つまり、インプラント治療を行った方も3ヶ月ごとのクリーニングが重要になります。
どれくらいの間隔でクリーニングに来るべき?
麻布台ヒルズ西堀歯科では、患者さまの歯周病リスク、生活習慣、インプラントの有無を踏まえて、以下を基準に通院間隔を設定しています。
歯周病リスクが低い方(炎症が少なく健康)
→ 6ヶ月に1回
健康な状態でも、半年以上間隔が空くとバイオフィルムが成熟しやすくなるため、6ヶ月以内の来院を推奨しています。
歯周病の既往がある方・軽度の炎症のある方
→ 3ヶ月に1回
記載した通り、最も科学的根拠のある間隔です。
継続的な通院により、歯周組織の安定と長期予後が期待できます。
中等度〜重度の歯周病治療後/インプラント周囲炎の既往がある方
→ 1〜3ヶ月に1回
- 骨の再生治療後、
- インプラント周囲炎治療後、
- 喫煙・糖尿病などハイリスク因子がある場合
これらのケースでは短い間隔での管理が最も予後を良くします。
クリーニングでは何をしているの?
麻布台ヒルズ西堀歯科のメインテナンスでは、以下を行っています。
- 歯科衛生士による バイオフィルム、歯石の徹底除去
- 歯周ポケット・出血のチェック
- インプラント周囲組織の精密検査
- 噛み合わせの評価
- 生活習慣(食いしばり・口呼吸など)の見直し
- 必要に応じて歯周病専門医が介入
まとめ
歯周病予防の最も確実な方法は“定期的なメインテナンス”
- 歯周病は痛みなく進行する「静かな病気」
- 歯周病の方、既往のある方は 3ヶ月間隔のクリーニングが最も効果的
- インプラント患者でも3ヶ月ルールが重要
- 長期的に歯やインプラントを守るには、継続したプロフェッショナルケアが不可欠
麻布台ヒルズ西堀歯科では、患者様一人ひとりの状態に合わせて、もっとも効果的で、長期的な口腔の健康につながるメインテナンスプランをご提案しています。
参考文献
Lang NP, Tonetti MS. Periodontal risk assessment (PRA) for patients in supportive periodontal therapy (SPT). Journal of Clinical Periodontology. 2003;30(Suppl 5):179–188.
Monje A et al. Impact of maintenance therapy for the prevention of peri-implant diseases: A systematic review and meta-analysis. Journal of Dental Research. 2017;96(4):372–379.
